恋の神様に受験合格祈願をしたら?
「どうして菅野さんが?」
 唇の横を腫らしたニコちゃんが、信じられないものを見るように瞬いた。
 けど、すぐ我に返ると、
「濡れちゃいますから離れて下さい」
 俺を離そうと、一生懸命両腕に力を込めだした。
 バカすぎるだろ。
 本当にバカ。
 こういうときは、自分を最優先に考えろよ。
 俺はニコちゃんの頭を自分の胸に押し当てた。
 俺は抱きしめた腕の位置をわずかに変え、みんなから隠すようにニコちゃんを包み込んだ。
「ニコちゃんは本当に可愛すぎ」
 目頭が熱くなっていく。
「私なんかどうでもいいんです。菅野さんが濡れちゃいますから」
 俺を気遣うニコちゃんの言葉が、俺の胸を熱くする。
 こんな小さな非力な体で1人、俺のためにアイツらに向かってったんだよな。
 アイツらに告白させないって何?
 その言葉聞いて、つけあがらない男はいないぞ? 誤解するぞ?
 体中が震えた。
 怖いとか寒いとかじゃない。
 静かでいて強い感動がこみ上げてくる。
 ああ、俺はこの子を守るために存在したいんだって、小さな体を力一杯抱きしめながら強く思った。
 告白しよう。
 もし、ニコちゃんの俺に対する好きがそれほどじゃなかったとしても、俺はニコちゃんが好きだし、これからも護るし、ニコちゃんが嫌がってもニコちゃんの隣にいて、ニコちゃんが好きになってくれるのをいつまでも待つよ。
 俺はブレザーを脱ぐと、髪の端から雫を落とすニコちゃんを包んだ。
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