永遠に愛を貴方に捧げて
特別に取り寄せたという紅茶を飲んだふりをしながらアリアの話に耳を傾ける。

「それで皆様は次のドレスはどういうのにするか決めてらっしゃるの?」
「私はもう決めましたわ。ここ最近人気のデザイナーに頼みましたの」
「まぁ、それって予約困難って言われてるところかしら?ルイーズ様、すごいわ。」
「そういうアナ様だっていつもドレス素敵よ」

アリアの取り巻き達が楽しそうに会話をし始めると、
「まぁ、皆様もう決めているのね。でも、ルイーズ様の人気のデザイナーて言ってもその辺の娘に人気ってだけでしょう?」
「そ、そうですわね、もちろんでございます‥アリア様には敵いませんわ」

アリアの発言に慌てて返すハリス家のご令嬢。
なんという空気なの…。
アリアのお茶会ってまさかいつもこんな感じだったりするのかしら。
まだ私への皮肉と嫌味を言われている方がよかったのかもしれない。
アリア以外、みんな引き攣った笑みを浮かべアリアの機嫌を損ねないようにしている。

この関係性なら全員で私に何か仕掛けてくることはなさそうね。
注意深く観察するが今のところ怪しげな動きはない。

その後もただアリアの自慢話に付き合わせられるだけでなにも起きない。

早く終わってほしくて時計を見ると、そろそろお開きにしてもいい時間だった。
けれど、アリアはお茶会を一向に終わらせようとしない。
むしろ、どんどん話題を変えて終わらせないようしているようにも思える。

もしかしてアリアは何かを待っているのでは、そんな疑問が出てくる。

でも、何を待っているの?外だから暴漢を装って私を襲う人物を待ってるとか?

色々な考えがリリィの頭に浮かぶ。

そんな時、侍女が来てなにやらアリアに耳打ちをした。それを聞いたアリアが歪んだ笑みを浮かべる。

「私、そろそろ帰ろ‥「そうそう、今我が家に滞在している子を紹介しようと思っていたのよ。ちょうど帰ってきたみたいだわ」

帰ろうとするリリィの言葉に被せ、アリアが言う。
まるで忘れていたかのように言うがその表情と言い方から今日のお茶会の目的はその人物と私を会わせることが目的のようだった。

クロード家に誰かが滞在してるなんて情報はなかったはず。
つまり、私と会わせてることで何かが起きるってことね。

何が起きてもいいように護衛と目配せをして警戒する。

侍女に連れられて来たのはフードを被った人物。

「遅いわよ。何していたの?」
「申し訳ございません」

氷のように冷たい声、感情がないようだ。
この声は女性かしら‥?女性で私に会わせたい人物‥。

「まぁいいわ。ほら、早く挨拶しなさい」

アリアがそういうと彼女はフードを取った。
真っ白な髪が風に靡く。

「初めまして、アリア様の元に滞在させていただいております。ユリアと申します」
「彼女は人間なのよ。訳があってクロード家に滞在してるの。私達が人間と関わることはないでしょう?だから、皆様に紹介したくて、それと彼女は‥」

アリアはそこまで言って一度口を閉じる。
そしてリリィの視線を向けてからこう言った。

「魔術師なの」

その瞬間、ユリアが聞いたことのない言葉を発する。
リリィがまずいと思った時には遅かった。後ろにいた護衛達がみな倒れる。

「さようなら、リリィ様」

ヴァンパイアの力で彼女の詠唱を止めようとする。
しかし間に合わず、リリィの体から力が抜け地面に崩れ落ちた。

意識はあるけど、力が全く入らないわ‥。
片手をつき、なんとか顔を上げる。

「な、何をしたの‥」
「何もしてないわよ。ねぇ、みなさん?あなたが勝手に倒れたのでしょう?」
「ふざけないで」
「ふざけてるのはどっちかしら?私の邪魔を何度もして。ウィル様は私のものよ」
「ちがうわ‥ウィルは誰のものでもない」
「ほんとっ!うざいわね。まぁ、いいわ。苦しみながら死んでね、リリィ様」

体がおかしい‥。力が入らないだけじゃない、感じたことのない倦怠感が襲ってくる。
まるでヴァンパイアの力を使いすぎた後のように体が重いわ。
もしかして、ヴァンパイアの力を放出させて、そのまま死なせるつもり…?
そんな魔術があるなんて、ヴァンパイアの力より厄介じゃない。

今すぐに血を飲まないと死ぬ。
既に視界は黒く染まり始めていた。

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