【愛したがりやのリリー】



「榊が想像してるよりは、ずっと知ってる。なぁ、いつまで不毛な気持ち抱えたまんまでいんの」


 次にくる言葉は想像できていたはずなのに、言われるとやはり胸の奥深くを抉った。

 痛みに瞬間、息が詰まる。


「若宮には……若宮には、関係ない」


 抉られた部分が痛くて、抉られた部分の表層部を強く握る。

 握ったところも痛かったけど、奥の方のがもっと痛かった。


「関係ないかもね、確かに。でも、見てて痛い」


 ぽつりと独り言のように落とされた言葉は、あたしを容赦なく責め立てる。

 ぽつり、ぽつりと。


「……あたしの、勝手でしょ? あたしが誰のことをすきでも、若宮には全然関係ない」


 心が斑に染まっていくのが、自分でもわかる。

 冷静でいたいのに、理性が感情を抑えきれない。

 指先はこんなに冷たいのに、胸と頭は沸騰しそうに熱い。


「うん、そうだな。でもさ、いつまでその気持ちを隠し持っておくつもりなんだよ」


 熱が移ったように目頭が熱くなってきて、けれどあたしはそれを気取られたくなくて俯いた。

 泣いてなんかやるもんか。

 泣いたら、あたしが悪い事をしてるみたいだ。可哀相な人みたいだ。

 そんなの、認めたくなかった。

 認めたら、折れてしまう気がして。もう戻れなくなる気がして。


「そんなの、言えるわけないじゃない……間違ってるってわかってる。家族にこんな気持ちあっちゃいけないって、言われなくてもあたしが一番わかってる! でも……でもっ、頭に心がついていかないの……っ」


 声が荒くなる。

 声も気持ちも大きくなって、止められない。

 一度箍(タガ)を外したら、いつも心に押し込めていた気持ちは止まらなかった。


「すきなんだもん、しょうがないじゃん……お兄ちゃん以上にすきになれる人なんて、いないんだから……。もう、絶望しちゃうくらい、すきで苦しいの……っ」



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