オジサンに恋しちゃダメですか
「これで、自宅まで帰れ。」

課長の手には、2,000円が握られていた。

「あの、私、大丈夫です。」

「いいから。」

私の手に、その2,000円を握らせ、課長はドアから離れた。


「あの、課長……」

その瞬間、無情にもタクシーのドアが、閉まった。

ゆっくりと、走り出すタクシー。

どんどん、課長の姿が小さくなっていく。


課長……

どうしても、私に振り向いては、貰えないんでしょうか。

年の差とか、そんなの関係なしに、課長の気持ち、聞きたかったな。


そんな事を考えてたら、また涙が、ボロッと零れた。

これで、終わり?

私の恋は、失恋で終わったの?

どうしても、納得できなくて、前かがみになった。


「お客さん、大丈夫ですか?」

「はい。」

その時の私は、タクシーの運転手さんに、答えるだけで、精一杯だった。
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