最低な君は、今日も「大嫌い」を口にする
最悪だ。
生臭いにおいが髪にこびりついたように離れない。
必死で水洗いするもなんとなく汚い気がする。
冷たい水がポタリと頰に落ちた。
まずい、ここは屋上じゃないのに。
鼻の奥がぎゅうっと痛くなって目頭が熱くなる。
必死で目に力を入れて瞬きをしないように踏ん張っていると、
「…あのー
この前の…屋上にいた人ですよね?」
どこかで聞いたことのある声に振り向いた瞬間、我慢していた涙がこぼれた。
私の顔を見てまた目をまん丸にした彼は、
慌てて自分が持っていたカバンから何かを取り出す。
ふわりと包まれたものに目を瞑ると、
柔らかい香りがした。
「なんでこんな髪濡れてるんですか?!風邪引くっ!」
焦ったように私の頭をがしがしと拭う力は思ったより強い。
頭が揺さぶられて思わず変な声が出た。
しばらくされるがままになっていると、
白い布地に覆われていた目の前がパッと明るくなった。
大きな身体をかがめて私を覗き込むと、
「これでよし。」
満足そうにくしゃりと笑った。
人懐こそうなえくぼがなんだか可愛い人だ。