最低な君は、今日も「大嫌い」を口にする


「ほんと、不器用」

雑音の中たしかに聞こえた。

ゆっくりと顔を上げれば案の定、私を見て意地悪そうに笑う市ノ瀬君がいる。

誰もその声に気づいていないようで、その言葉に返す者はいない。
私だけが聞こえてしまった。

"ほんと、不器用"


その言葉は今の私にぐっさりと突き刺さる。
"不器用"なんてたった一言で片付けないでほしい。

どうしてそんな無責任な言葉で私のことを分かったように言うの?
私の顔をみて満足そうに笑う市ノ瀬君から慌てて目をそらす。

クラスメイトたちはもちろん怖い、
だけど私は市ノ瀬君が一番怖い。


先生が入ってきて、授業が始まった。

授業が始まってからもなんとなく、市ノ瀬君が私を見ているような
そんな気がした。

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