最低な君は、今日も「大嫌い」を口にする
"君でしょ、市ノ瀬のお気に入りって"
三宅君の言葉がやけに頭から離れない。
お気に入りって、何?
なんで三宅君がそんなこと知ってるの?
まさか、市ノ瀬君と三宅君て友達…とか?
だとしたらかなりまずい。
千藤君と"友達だ"なんて言っているところも全て、三宅君に見られた。
もしかしたら市ノ瀬君に言ってしまうかもしれない。
そんなことになったらーー
想像して思わず肩をすくめた。
どうなるかわからない。
下手したら千藤君に何かするかもしれない。
その時、不意に机に影が落ちた。
顔を上げるとそこにいたのは、
私を見下ろす冷たい目。
「田宮さん、今日放課後空いてる?
空いてる、よね?アイツとも遊んでたんだし」
ひ、と息を飲む私に微笑む。
「教室で待ってて。」
言うだけ言ってさっさと席に戻ってしまった。
クラスメイトたちには今の会話が聞こえていなかったようで、「田宮に何話してたんだよー」なんて詰め寄られていた。
"教室で待ってて"
この一言で、情けないことに私は呪いをかけられたように動けなくなってしまう。
ただの約束じゃない。市ノ瀬君からの言葉は、私にとってもはや"命令"だ。
どんなに嫌でも逃げたくても、身体が動かない。
出来るなら来ないで欲しいと何度も願った放課後は、あっさりとやってきた。