最低な君は、今日も「大嫌い」を口にする
寒い。
誰も居なくなった教室でぼんやりと市ノ瀬君を待つ私は、本当にバカなんじゃないかと思う。
冷たくなった指先を擦り合わせて息を吹きかけたその時、
カタンと小さな音がして後ろのドアが開いた。
「………」
「……何?」
「なんでも、ないです」
遅くなっておきながら待たせてごめん、の一言もない市ノ瀬君を暗闇なのをいいことに睨みつける。
足音が近づくたびにじわじわと顔が下を向いた。
視界に映った上履きに、市ノ瀬君がすぐ目の前に立っていることが分かる。
知らず知らずのうちに力が入っていた両手を膝の上でぎゅっと握りしめた。