最低な君は、今日も「大嫌い」を口にする


「アイツ、千藤とはもう関わらないって言え」

「……え?」

「いいからさっさと言え」


意味がわからない。
口を半開きにしたまま市ノ瀬君を見上げると、今まで見た中で一番不機嫌そうな顔で。

思わず怯んでしまう。


「さっさとしろよグズ…」

ため息と一緒に苛立ったように前髪を搔き上げる。
その仕草に本気で機嫌が悪いのだと察してしまう。

でも、

やっぱり意味がわからない。
どうしてそんなことを言わなければならないのか。


「……い、や」

「は?」

「いやだ…」


言ってしまった。
初めて市ノ瀬君に反抗してしまった。

だけどこれだけは譲れない。

せっかく友達だと言ってくれたのに、
自分から捨てるなんてできない。


「…自分が何言ってっか分かってんの?」

「わかってる…」

言った瞬間、思い切り腕を引き上げられた。
弾みで不恰好に立ち上がると、近すぎる距離に市ノ瀬君の顔があった。

前髪同士が擦れてじゃり、と音がする。


「田宮さんに拒否権とかないから。千藤とは関わるな。分かったな?」

あまりの剣幕に声が出ない。
掴まれた腕がどうしようもなく痛い。

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