最低な君は、今日も「大嫌い」を口にする


苛立ったように早足で歩く市ノ瀬君に慌ててついていく。

「あの、カバン持つよ」

「…良いって」

「でも今雨降ってるし、傘差せない…」

「いいっつってんだろ」

「病院ついていこうか?私病院代も出す…」

「あーもううざい!!!ついてくんなって!!千藤のとこいけよ!!!!」


大きな声に大げさなくらい肩が跳ねる。
息を切らせた市ノ瀬君は私の顔を見てはっとしたように唇を噛んだ。

ぎゅっと眉を寄せると下を向いて、呻くように言った。

「…大丈夫だから。病院も1人で行くし、もういいから帰れ」

それだけ言ってさっと踵を返した。


ざばざばと大きな音を立てて降る雨の中、不器用に傘をさして飛び出して行った市ノ瀬君の後ろ姿が見える。

やっぱりカバンと傘を持つのは難しいんだろう、

土砂降りの中傘を落としてしまっていた。

それを見た瞬間、私は駆け出していた。

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