最低な君は、今日も「大嫌い」を口にする


「大丈夫?田宮さん」

言いながら私の背中をさすってくれる千藤君は、市ノ瀬君を睨む。
拳を握りしめたまま立ち尽くす市ノ瀬君は私を睨み続けたままで。

「…市ノ瀬君、意味わかんないよ」

「田宮さんがバカなだけじゃん」

「…そう、私がバカだから市ノ瀬君のこと分かんないのかもね。でももういいよどうでも」


もう嫌だ。
市ノ瀬君に振り回されて一人で苦しんで。

「いこ、田宮さん
歩ける?」

言いながら千藤君が私の手を引く。
その手の力が強くて、ちらりと上を見上げる。
千藤君は眉間に皺を寄せたまま、市ノ瀬君をじっと見つめていた。


そのまま手を引かれるようにして踵を返そうとした時だった。


無理やり方向を変えるように肩を掴まれる。

気づいた時には薄く開いた綺麗な二重の目がありえないくらい近くにあって、

噛み付くように生温かい唇が重なった。


「なっ……!」

千藤君が息を飲んだのがやけにリアルで。

薄く開かれていた市ノ瀬君の目が伏せられているのがぼんやりした視界に映った。

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