クールなアイドルの熱烈アプローチ
「あ、あの、それでですね、大堂を解雇させるには他の事務所とのトラブルが……ああっ、今現在十分なってるんですけど、世間ではあれはただの熱愛発覚にしか見られてなくて……」

おどおどしながらチラチラ朝陽の顔色を伺い話す蛯名に堀原は僅かに同情していた。
相変わらず威圧的に蛯名を睨み付ける朝陽はどこかの社長のような尊大な雰囲気だった。

ーー……本当に陽菜と血が繋がった姉弟か?

そう思ってしまうほど陽菜と朝陽は真逆の性格だった。
いや、そんな二人だからこそ仲良くやってこれたのかもしれない。

……とは言え、このままでは話が終わらないと思った堀原は蛯名に嫌々ながらも助け船を出すことにした。

「つまり大堂が虚言を吐き、秋村を故意にトラブルに巻き込ませたという物的証拠があればいいんですね?」

「っ!!そう!そういうことなんですよっ!!」

言いたいことを代わって言ってくれた堀原に、蛯名は涙目に食い付いてきた。

「物的証拠ねぇ……逆にそっちにないの?
大堂を追いやる証拠品」

「実は、私と事務所に向けた暴言をボイスレコーダーで録音してるんですが……」

「それだけでは大堂の評判は若干落ちても単なる事務所内のトラブルとして認識されると……」

「そうなんです……そこで、秋村さんに図々しくもご協力を願えないかと……」

そう続いた蛯名の言葉に朝陽は今までで一番冷たい視線を浴びせた。
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