クールなアイドルの熱烈アプローチ
次の日、陽菜はいつもの変装セットに身を包み、怪しくない程度に辺りを警戒しながら待ち合わせ場所に来ていた。
ほぼ初対面の人と会って話すのは緊張してしまって、中々眠りにつけなかったほどだった。

ーーでも、今日はどうしても頑張って、会って話さないと……。

ドクドクと心臓から嫌な音がして陽菜が服をぎゅっと掴んだその時、スマホが鳴りだした。

「……はい、秋村です」

『秋村さん、お久しぶりです！
私達、待ち合わせ場所についたんですけど、どこかにいますか？』

陽菜が周囲を見てみると少し離れた所に辺りを見回してるいつものヘアメイクさんと、一度だけ会ったことがあるモデルの子を見つけた。

「私もついてます。
今そっちに行きますね」

電話を切り二人に向かって歩き出す。
二人は陽菜と背格好は似ていても、その他は全く似ていない女性が近づいてくるのを訝しげに見ていたが、その人物が目の前で止まると驚きに目を丸くした。

「お久しぶりです。秋村です」

右手でメガネを外し、左手でカツラを少し掻き分け中に収まっている栗色の髪を見せる。
普段の秋村陽菜とかけ離れた地味な姿に二人は暫し言葉を失っていた。
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