クールなアイドルの熱烈アプローチ

移動したのは待ち合わせ場所から近くにあるお洒落なカフェの奥まった外からは見えない一角。
そこに三人が座って飲み物を注文し終わった後にボソッと呟かれた。

「変装の為とは言え、オフの秋村さん……いつもの姿から想像できないですね」

「でも、結構落ち着くんですよ？」

「うーん、でも存在感がなくなっちゃうと言うか……。
あれ？でも私、現場でこの姿の人と何回かすれ違った気も……？」

「あ……何度かこの姿でお会いしてます。
初めは撮影が終わったらすぐ変装して気配を消すのに必死だったので……」

「嘘っ！？全然気づかなかった！！」

と驚く彼女に苦笑していると注文した飲み物が運ばれてきた。
それぞれ一口飲んだ後、ずっと黙りこんで俯いていたモデルの子、篠崎英理(しのざき　えり)がパッと顔を上げると陽菜に向かって突然、ごめんなさいっ！と頭を下げた。

「私……あの時、大堂さんに脅されて……秋村さんに迷惑がかかることはわかってたんですけど、怖くて……」

言いながらボロボロ泣き出す英理に陽菜は慌ててハンカチを取り出し、よかったら……。とおずおずと渡す。
彼女はそれを受け取り号泣しだすと、陽菜は戸惑いながらヘアメイクさんに助けを求めるように視線を移した。

「秋村さん、私がこの子から聞いた話を全て伝えますね」

真剣な眼差しに陽菜はゴクリと唾を飲み込み頷いた。