クールなアイドルの熱烈アプローチ
いつもよりあまり眠れなかった陽菜は生欠伸をしながら待ち合わせ場所にいた。
この季節は日差しはそこまでキツくなく、気温は暖かいが吹く風は冷たくて、無意識に手を擦って温めていると、傍に誰かが立ったのに気付いた。

「あ、おかえりなさい」

「ただいま」

勇人の後ろや周りをキョロキョロと確認するが、勇人以外の人物は見当たらない。

「あの、古河さんは……？」

「拓也はデートの邪魔はしないと言ってさっさと帰った。
……いた方が良かった？」

「い、いえ……えっと……」

答えにくい質問に陽菜は、うーん……。と悩むが、別に答えを欲していないのか勇人は陽菜の答えを聞く前に手を取り歩き出した。

「行こう。
拓也が君にお勧めだという店が近くにあるらしい」

「あ……はいっ！」

繋がれた手は暖かくて、先程までの寒さが嘘のように陽菜は体の中から暖かくなっていた。

暫く二人で歩いた先にはレストランがあった。
女性客が多いようだったが、勇人は気にすることなく陽菜と手を繋いだまま入ると、窓際の席を案内され二人で腰を下ろした。

「メニューに全部写真が載ってるんですね。
可愛く盛り付けてる……」

「君が好みそうだな」

メニューに目を落とし、それぞれが気になったものを注文する。
ちょっとしたデートのようで、陽菜は少し気恥ずかしくも嬉しかった。
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