クールなアイドルの熱烈アプローチ
夜中にふと目が覚めると、陽菜はぼんやりと天井を見つめた。

ーー私、どうしたんだっけ……？
確か越名さんが久しぶりに戻ってきて一緒に食事をして、楽しく話していて……。

陽菜が思考していると、控えめなノックの音の後にガチャッと扉が開く音が聞こえた。
恐らく勇人だろうと察するが、陽菜は寝起きでぼんやりしたまま視線を動かすことが出来なかった。

ゆっくりと勇人が近づき陽菜の顔を覗きこむと、陽菜が起きていたことにほんの少し驚いたようで、一泊した後にそっと手を握ってきた。

「さっきは言い方が悪かった。
すまない……」

勇人の声にも陽菜はぼんやりしたまま反応出来なかった。
陽菜の中ではグルグルと大堂の言葉が渦巻いて支配していた。

「越名さん、は……」

「ん？」

長い沈黙の後、ようやく陽菜が発した言葉を聞き取ろうと勇人は陽菜の口元に耳を寄せた。

「越名さんは……私が言うことを聞く、扱いやすい子だったから……だから、勘違いさせたんですか……？」

「何を言って……」

「私が、誰かの言う通りにしか……動けない子だから……」

言いながら、陽菜の目からは涙が溢れてきた。
陽菜は両手で顔を隠すが涙は止まらない。
勇人はその腕を掴み強い力で陽菜を引っ張り起こすと、その勢いのまま強く抱きしめた。
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