クールなアイドルの熱烈アプローチ
「前に言っただろう?俺は、雑誌の君を見て一目惚れしたんだ。
分かるのは容姿だけで、その時は性格までは分からなかった」

抱きしめたまま、勇人は言葉一つ一つを丁寧に選んで話す。
さっきみたいな失敗はしないようにか陽菜を混乱させないように、陽菜に伝わるように……。

「言うことだけを聞く扱いやすい子がいいなら君でなくてもいいはずだが……俺は、君でないと駄目らしい。
誰を見ても、こんなに動悸はしないし、一緒にいたいとも思えない。君だけがいいんだ」

勇人の温もりと言葉に陽菜は涙が止まらず、恐る恐る手を伸ばして勇人の背中に回して服を鷲掴むと、しがみつくようにして泣き出した。

怖かった。苦しかった。悲しかった。
大堂のあの言葉に、自分がすごく嫌な子に思えた。

声を上げて泣く陽菜の背中を勇人はそっと撫でた。

あのスキャンダルの日から、陽菜は人にかける迷惑のことばかり気にして自分の事を気にしてこなかった。
今やっと感情を爆発させて泣いた陽菜を目の前にして、勇人は密かに新たな決意を胸に陽菜を優しく包み込むように抱きしめ直した。
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