クールなアイドルの熱烈アプローチ
勇人が家に帰ってくると、いつも部屋中がいい匂いに包まれていた。
陽菜が作る料理は決して手の込んだものではなく一般家庭でよく出るような料理ばかりだが、どれもホッとするような味付けだった。

「お、おかえりなさい……」

「ただいま……どうした？」

いつもは笑顔で駆け寄ってきてくれるのに、今日はひょこっと仄かに赤くなった顔を出しただけで近づいて来ない。
勇人が訝しげに見ていると、ふと何かに気付き、急ぎ陽菜の元へ向かい腰と後頭部に手を回して固定すると額をくっつけた。

「っ！？」

「微かに熱い気がする……熱……？」

「ち……違っ……越名さん、近いですっ！
今日、越名さんが局入りする時の放送を見て恥ずかしくなっただけですっ！」

パニックになった陽菜は必死に訴え勇人の腕から逃れようとするが、勇人はそんな陽菜を見て小さく笑うと悪戯にさらに抱き寄せた。

「っ！！」

「ちゃんと本気だから……誰にも邪魔させない」

勇人の言葉に陽菜はさらに熱くなり、やっぱり熱があるんじゃないか？とまた言われることとなった。
< 147 / 242 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop