クールなアイドルの熱烈アプローチ
「お疲れ様でしたー!!」

盛大な拍手と歓声がスタジオ内を包み込む。
Kaiserの新曲PV撮影が無事に終了したからだ。

ーーや……やりきった……!

初めての静止画ではない撮影に終始緊張が解れることはなかったが、Kaiserの二人の雰囲気に良い意味でのまれ、陽菜は本当に王子二人に求愛されるヒロインになれたような気がした。

「お疲れ、陽菜ちゃん!初めてとは思えないくらい上手だったよ!!」

「古河さん……お疲れ様でした」

疲れなど微塵も見せずに拓也が小走りでやって来たので陽菜は咄嗟にお辞儀をする。
頭を上げて拓也の後ろにいる勇人に目を向けると、何故か勇人は自分の手をずっと見つめていた。

ーーどうしたのかな?
ダンスの時に痛めたのかな?

心配になるが自分から話しかける勇気もない陽菜はどうしようかと悩んでいたが、結論が出る前に隣に堀原が立ったので思考を中断させた。

「陽菜、そろそろ時間だ。いくぞ」

「あ、はいっ!
みなさん、お疲れ様でした!!」

陽菜の中で一番大きな声を出しながら挨拶し、頭を下げる。
この業界に入って一番に叩き込まれたのが挨拶だったので、これだけは人見知りであがり症の陽菜でもなんとかできるようになった。

「「「「お疲れ様でしたー!!」」」」

スタッフの暖かい声と拍手に陽菜は自然と笑顔になると、Kaiserにも会釈をして堀原に続いてスタジオを後にした。
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