クールなアイドルの熱烈アプローチ
「堀原さんの嘘つき…堀原さんの鬼…堀原さんの…」

「久々に聞いたな、それ」

呆れた口調で言われるも、陽菜が堀原へ向ける恨みのこもった視線は決して反らさなかった。

新しい仕事だと言われて来てみれば、場所は日本で一番大きいと言われるドームで陽菜はその控室に押し込まれていた。

ヘアメイクさんと衣装さんが張り切って陽菜に支度をしてくれたその上から、例の変装グッズで地味目な格好をするといった意味の分からない状態にされている。

しかも、ここにまで聞こえてくるザワザワとした賑やかな声。
たまに歌や音楽が聞こえ、Kaiserー!!や、拓也こっち向いてー!!や、勇人カッコいいー!!といった声まで聞こえる。

もしかしなくてもここはKaiserのライブ真っ最中のドームの控室なのではないか。
それなら何故、ここにこうして陽菜が仕事でいるのか……今の陽菜には分からない事が多すぎた。

「堀原さん、一体今日は……」

「そういえば、やっとこの間の対談の記事が載ったらしいぞ」

見るか?と明らかに陽菜の言葉を遮り、話をねじ曲げた堀原は対談の記事が載っていると言った雑誌を陽菜に渡した。
何の対談の記事かと思いながら受け取り中を開くと、それは長いこと記事にされなかったKaiserと陽菜の対談の特集が載った雑誌だった。

「わあ……もう記事になるのは無理かと思ってました……」

ただ手帳が無くなっただけだと思っていた頃の気持ち的にも平和だった対談。
陽菜は懐かしく思いながら読んでいると、最後の方の文章を見て衝動的に立ち上がった。
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