クールなアイドルの熱烈アプローチ
『みんなーー!!楽しんでるーー!?』

「ひゃ……っ!?」

その場でおどおどしていた陽菜は突然スピーカー越しに響いた拓也の声に驚いた。
ライブでは当たり前なのか拓也の声にドームのみんなが一斉に歓声を上げているのが聞こえ、陽菜はまだドキドキする胸に服の上からそっと触れた。

『問題!この衣装、何の曲の衣装か分かる人ー!!』

拓也の問いかけにも、分かるー!!と観客のみんなが返事をしている。

衣装……。と思って陽菜が自分が着せられた衣装を見てみると、それは陽菜が初めて映像デビューした時に着ていたKaiserの新曲のPVの衣装だった。

『この曲にはスペシャルゲストが……実は本人にも内緒で来てもらってるんだけど、みんなはもちろん誰か分かるよね?せーーのっ!!』

陽菜ちゃーーんっ!!

会場が一体となって陽菜の名前を呼び、それと同時に陽菜も良く知っている曲が流れ始めてカーテンがゆっくりと上がる。

“PVを思い出して頑張ってください!”

先ほど言われたスタッフの言葉を思いだすが、陽菜は未だに事態が飲み込めずに立ち尽くしていた。

カーテンが上がりきると目の前には数えきれないほどのペンライトが輝き、揺れていた。
足がすくみそうになりながら、陽菜は必死に足を動かして一歩踏み出す。

Kaiserが歌い始めるが陽菜を見た観客達は驚き、その場は騒然となった。
ステージにいるのはみんなが知っている陽菜ではなく、少し前に勇人とスクープされた一般人だと思われている変装した陽菜の姿だったからだ。

ざわつく観客に陽菜は震えそうになるが、なんとか歩き続けてPVの時の衣装を身に付けている拓也と勇人がいるステージの中央に差し掛かった。
その時、誰もが目が眩むような強力な光が当てられ陽菜を含めた全員が強く目を瞑る。

その一瞬の間に変装した姿の陽菜は消え、同じ場所には綺麗にドレスアップした陽菜が立っていた。
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