クールなアイドルの熱烈アプローチ
やがて勇人はマントを翻すと、陽菜の手を握ったままその場で片膝を着き陽菜を見上げた。
その真剣な雰囲気に観客から一瞬どよめきが起こるもすぐに止み、みんながじっと勇人の様子を見守っていた。

『……初めて見た時から恋い焦がれていた。
会うたびに何度も好きになった。
これからも、ずっと一緒にいたいと思うし、君の隣にいるのは永遠に俺でありたいと願う……。
陽菜、俺と結婚してください』

マイク越しに会場中に伝わる勇人の想いと、ステージ上のスクリーンでアップにされた真っ赤な顔で目を見開いて動揺している陽菜の様子に全員が口を手で押さえる。

涙が自然にポロポロと流れ、何か言おうと口を開くも声にならなかった陽菜は思いきって勇人に自分から抱きついた。

しっかり陽菜の体を抱き止めた勇人は強くその体を抱きしめる。
陽菜は嗚咽混じりになりながらも、小さい声で返事をした。

『ありがとう、ございます……。
よろしくお願いします』

勇人に付いているマイクが陽菜の声を拾うと、しんとしていた会場はその瞬間に今日一番の大歓声が響き渡った。

おめでとう!
幸せになってね!!
二人とも大好きーっ!!

会場中がお祝いムードになるが、ステージ上にいる陽菜と勇人はまだ強く抱き合ったままだった。
ステージ前にいる関係者席では、勇人がチケットを渡した雑誌記者がその様子をカメラにおさめていた。
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