クールなアイドルの熱烈アプローチ
「大体、朝陽……越名さんのこと“兄さん”だなんて気が早すぎ……」

「え?だって結婚するんでしょ?
それに、やっと俺の野望が叶ったんだからいいじゃん」

「……そう言えば、よく“野望”って言ってたけど……朝陽の野望ってなんだったの?」

「えー?前にも言ったのに、もう忘れたの?」

陽菜の問いかけに不満そうにクリームソーダのアイスをつついていた朝陽は一拍置いてからニヤリと笑った。

「勇人さんみたいな兄さんが欲しいって俺、言ってたでしょ?あと、可愛い甥っ子や姪っ子も。
実は、陽菜姉が芸能界入りした時からKaiserのどっちかと付き合ったりしないかなーって密かに期待してたんだよね。
大ファンだし、二人とも格好良いし?陽菜姉なら絶対いけると思ったしね」

変に自信を持って言ってくる朝陽に陽菜は開いた口が塞がらなかった。

「暫く二人の時間を楽しみたいから、すぐに甥や姪は無理だが……戸籍上の兄なら今すぐなれるな。
陽菜、婚姻届出しに行こう」

朝陽の話を聞いて、冗談のようで本気の勇人が陽菜の手を取りすぐにでも役所に行こうと立ち上がろうとするので陽菜は慌ててしまった。

「い、行きませんっ!
まだダメって堀原さんから言われてますっ!!」

「いいじゃん、黙ってたらバレないって」

「もう、朝陽っ!そういう問題じゃ……越名さんっ!まだダメですからねっ!!」

騒がしい三人の様子にその場に居合わせた全員が陽菜達の方へ視線を向け、話の内容に微笑ましそうに目を細めながらその様子を眺めていた。

陽菜の仕事が落ち着き、ようやく婚姻届が出せたのはそれから半年後のことだった。
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