クールなアイドルの熱烈アプローチ
「秋村さん!お久しぶりですっ!」

「こら、もう秋村さんじゃないでしょ?」

「あ、そうでした……えっと、越名さん」

「秋村か陽菜でいいですよ、恥ずかしいですし」

そう言いながら苦笑して、陽菜はやって来た二人に目の前の席を勧めた。

今日はあの騒動以降、意気投合し、会う機会が増えたヘアメイクさんと元モデルで今は舞台女優となった英理との久しぶりの女子会だった。

「大堂さんがいた事務所、あの騒動で潰れかけたのによく持ち直したわね」

「突如現れた新星舞台女優と言われている私がいるから潰れませんよー」

と二人が話しながらランチメニューを頼むのを陽菜は笑顔で見つめていた。

大堂のことが大騒動となり、一時は信頼を失った事務所も打撃を受けたが、蛯名と舞台女優に転身した彼女がタッグを組むとたくさんの仕事を手に入れ、元から女優としての素質もあったようでメキメキと頭角を現し、二人の活躍に徐々に信頼を取り戻した事務所は今では潰れそうには見えない立派な事務所となっていた。

「スタッフの間では陽菜さんのことも話題ですよ。
あのライブで婚約してから、初対面の人と会っても前みたいにおどおどせず堂々としているって」

「さすがにあんなに大勢の前でプロポーズされて、見ず知らずのいろんな人にすれ違い様お祝いされたり冷やかされたりしたら……多少の免疫くらいできますよ……」

少し遠い目になって話す陽菜に、この半年本当に大変だったのだろうと二人は顔を見合わせ苦笑した。
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