クールなアイドルの熱烈アプローチ
陽菜が大好物の勇人特製ハンバーグに舌鼓を打ち、片付けも終わり、食後のコーヒーを淹れてまったりとした時間。
リビングのマットの上に座り、明日の撮影の段取りの確認で台本を見ていた陽菜は後ろに勇人が座った気配を感じた瞬間にそっと後ろから抱きしめた。

「わ……っと……勇人さん?」

「陽菜……」

「どうしましたか?」

結婚した今でも勇人のスキンシップに慣れずに、すぐにどぎまぎしてしまう。
なんとか顔だけを少し後ろに向けると勇人がどこか落ち込んでいるように見えて陽菜は首を傾げた。

「今日の生放送……」

「今日の……?
あ……見ちゃいましたか?」

恥ずかしいから見ないでほしいっていつも言ってるのに……。と陽菜は持っていた台本で顔を隠す。

テレビもそうだが、雑誌でも写真集でも陽菜は自分の出ているものはデビューしてから今でもあまり見ないようにしているし、出来れば知り合いにも見てもらいたくない。
理由は単純に恥ずかしいからなのだけど、毎日のようにテレビやCM、街頭広告にまで映っている陽菜を見ないことなど出来るはずもなかった。

勇人は暫く言いづらそうにした後、休みを調整してもらったから。と呟いたので、陽菜はゆっくりと台本から顔を出した。
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