クールなアイドルの熱烈アプローチ
「すごいじゃん、陽菜姉。
どんなにチャンネル回しても陽菜姉出てくる」

「うぅ……テレビ消してー」

Kaiserとの撮影が無事に終わり、あっという間にPVが解禁となった。

今まで雑誌以外でのメディアに出たことがなかった有名新人モデルがいきなりトップアイドであるKaiserのPVに出演したことは大きな話題となり、連日のようにテレビの番組やCMでその模様が流されていることに陽菜は耐えられなかった。

「恥ずかしいよー!もう外歩けないーっ!」

「雑誌でバンバン顔出してて、何今更なこと言ってんのさ。
……あ、牛乳切れた。陽菜姉買ってきてよ」

至極真っ当な意見を口にしながら朝陽はコップに半分ほどまでしか入らなかった手元の牛乳パックに眉を潜めてそう言うと、陽菜は、ええっ!?と声を上げた。

「何で私が!?自分で買ってきてよー!」

「俺、風呂上がりだし?冬にこんな状態で外出たら湯冷めするじゃん?
ほら、お使いのご褒美にアイス買ってきて良いからさ」

「なんで朝陽に子供扱いされなきゃいけないのよー」

すごく不本意に思いながら鞄を手に立ち上がると、陽菜はいつもの黒渕メガネとロングヘアーのカツラ、そして帽子を目深に被った。
目立たないよう地味めなコートを羽織って外へ出ると真っ暗な空を見上げる。

数少ない瞬く星を暫し見つめてから白い息を吐き出し、陽菜は目的地のコンビニへと向かった。
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