クールなアイドルの熱烈アプローチ
「……どうしたんだ、これ」

「あ、お帰りなさい、勇人さん」

勇人が帰ってきたことにすぐに気付けないほど本に熱中していた陽菜は、勇人がリビングに入るなりテーブルの上を見て目を丸くしたのに苦笑した。
そこには陽菜が買ってきたたくさんの旅行雑誌、オススメスポット特集、人気のご当地アイスクリームといった本がたくさん乗っていた。

「旅行雑誌……」

「あ、はい。
国内と海外、とりあえずどちらも買ってみました」

「スポット特集……」

「場所を決めかねたら見たい観光地から決めればいいかなって……」

「アイス……」

「これは……その……気にしないでください」

恥ずかしさからその雑誌だけを隠そうとするが、いち早く勇人に取られてしまいページを捲られてしまう。

ああっ！！と思っていると勇人はいくつも丸をつけられたページを見ては笑みを浮かべ、やがて大きく花丸の書かれたページを見るとそっと目を細めていた。

「これ、食べたい？」

「い、いつか……いつか食べに行くんです。
私の密かな野望です……」

恥ずかしそうに呟く陽菜のたわいない野望に勇人はついに小さく吹き出す。
頬を膨らませぷいっと顔を背けた陽菜の頭を勇人が優しく撫でると、ここに行こう。と雑誌を差し出された。
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