クールなアイドルの熱烈アプローチ
『とっても可愛いね！良かったら今から一緒に海に行かないかい？』

「は……え……？」

英語がまったく出来ない陽菜は相手が何を言っているのか理解できない。
内心焦っていると、やがて男性は笑顔で陽菜の手を握りどこかに連れて行こうとする。

「やっ……ちょっ……困りますっ……離して……！」

『分かった。ボートに乗りたいんだね、任せて！』

ーーは、話が噛み合ってない気がする……！

男性の力に抗えず椅子から腰が浮きそうになった瞬間、突然横から伸びてきた手が男性の腕を掴み上げ、その拍子に離れた手を守るように陽菜は空いている手で己の胸に押さえつけた。

『彼女に触るな』

聞こえてきた英語は明らかに怒っていると言わんばかりの低い声。
陽菜は恐る恐る声のした方を見ると、案の定勇人が鋭い眼差しで男性を睨み付けていた。

『何だ、彼氏かい？
それは悪かったね』

男性は焦ったように笑いながらそそくさと去っていく。
安心したのも束の間で、陽菜はじっと勇人に見下ろされているのに気付くと慌てて頭を下げた。
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