クールなアイドルの熱烈アプローチ
誰かが出入りする度にピロピロと音が鳴るコンビニ。
陽菜は手に持ったカゴに牛乳を入れると、このコンビニでしか見かけない限定アイスを探していた。

ーーどこかなー?人気商品だからすぐ売り切れちゃうんだよねー。

他のどの店より何故かアイスの種類が格段に多いショーケースの前で陽菜がお目当ての物を探していると、二つだけ残っていたアイスを見つけた。

ーーあ、あった!パリパリトロ~リチョコレートバニラアイス!!

あまりの人気にすぐに売り切れとなってしまうこのアイスは、外にかかったチョコはパリパリとした食感なのにバニラアイスに包まれたチョコレートはトロ~ッと流れ出てくるという摩訶不思議なアイスだった。

ーーあと二つ……ラッキーだったなぁ。

朝陽と一緒に食べようと上機嫌でレジに向かい、会計をして商品を受け取る。
陽菜の頭の中は暖かい部屋でこのお気に入りの不思議なアイスを食べることで一杯だった。

足取り軽く出入口に向かい、店に入ってこようとした人をさりげなく避けて一歩外へと足を踏み出した。

「……秋村陽菜?」

小声だけれど確かに聞こえた。
すれ違い様に、戸惑いがちではあるが変装をした陽菜の名をハッキリと。

反射的に足を止めた陽菜は恐る恐る声の主に視線をやると、そこには大きめのマスクにサングラス。
帽子を被って顔が全く見えない男性がこちらを見つめていた。
< 20 / 242 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop