クールなアイドルの熱烈アプローチ
ツアー参加者は思ったより人が多く、日本人もたくさんいた。
帽子やサングラスをしていてもすぐにバレてしまった二人だったが、みんなが新婚旅行だと知ると初めに声をかけられただけで後はそっとしてしておいてくれた。

ほんの少し船に乗ると目的地にはすぐに着き、陽菜も勇人もその光景に圧倒された。
360°全てが海で深いのかと思ったら意外と浅く、すでに船から降りて思い思いに楽しんでいる人達がいた。

「勇人さん、行きましょう!」

早く早く!と珍しく急かす陽菜に勇人が頷くと、二人で船から降りて海に足をつけた。
ふくらはぎの真ん中程までの海水に、陽菜は楽しくなってくるくる回る。

陽菜が着ている白いワンピースが映えて、勇人は眩しそうに目を細めた。
“天国の海”に舞い降りた“天使”のようだと、口には出さなかったけれど勇人がそう思っていることなどはしゃぐ陽菜は知るよしもなかった。

「勇人さん、勇人さん、海ガメです!」

暫くして陽菜が回るのを止め、足下に近寄ってきた海ガメと少し離れたところにいる勇人を交互に見て眉を下げた。
勇人のところに行きたいが、海ガメがいて動けなくなり困ってしまった。

「そういえば、ここは高確率で海ガメに会えると船で言っていたな」

「そ、そうだったんですか?」

英語だから分かりませんでした……。と言って陽菜は海ガメが離れていくまでカメ、勇人、カメ、勇人と交互に繰り返し見続けていた。
< 202 / 242 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop