クールなアイドルの熱烈アプローチ
「陽菜……？」

朝起きたら隣に寝ているはずの陽菜がいなかったので勇人は体を起こし部屋を出た。
キッチンから料理をする音が聞こえ、勇人はゆっくりドアを開く。

「あ、おはようございます」

勇人に気付き、いつも通りの笑顔を見せる陽菜にようやく勇人は安堵した。

「おはよう。
体調はもういいのか？」

「はい！ぐっすり寝たらすっきりしちゃいました。
ちょっと疲れてたのかもしれません」

苦笑する陽菜の額にそっと触れると微熱もなくなり大丈夫そうだった。

「病み上がりが一番体調を崩しやすい。
気をつけて」

「はい、わかりました」

二人で陽菜が作ったご飯を食べる。
食べ終わって家を出るまでの間に今日の二人の仕事の予定を話したり、勇人が近々遠出しなければいけない事を話したりもしていた。

陽菜はあまり泊まりがけの仕事はないが、トップアイドルであるKaiserの勇人はライブツアーがもうすぐ始まってこの先、帰ってこれなくなることが多くなる。

「今回は全国ツアーで数ヶ月ほどかかる」

「数ヶ月、ですか……」

「ずっとその場所にいるわけではないから、帰れる時は帰ってくる」

陽菜のことを心配して勇人がそう言うと、陽菜は苦笑しながら小さく首を振った。

「無理しないでください。
私は大丈夫ですから」

「……俺が、大丈夫じゃない。
毎日でも会いたい」

はっきりと、真っ直ぐ見つめて言いきった勇人に陽菜は真っ赤になる。
いつまで経っても勇人の言葉に慣れることのない陽菜に勇人は目を細めて笑った。
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