クールなアイドルの熱烈アプローチ
全国ツアーの真っ最中、勇人はスマホを気にしつつも拓也とステージの確認をしていた。

「やっぱりこの時のライトは緑がいいと思うんだけど、どう思う?」

「……」

「勇人?おーい、聞いてるか?」

ステージから目を離してじっと勇人を見てきた拓也に、勇人は今気がついたと言うように顔をあげた。

「すまない、聞いてなかった」

「勇人が上の空って珍しいな……陽菜ちゃんか?」

片手に持っていたスマホに視線を落として拓也が問うと、勇人は小さく溜め息をついた。

「あれから体調に波があって、何かしらしんどい時が多いらしい。
ただ、病院に行くのも薬に頼るのも忍びないほどの軽い症状だから様子を見ている状態らしいが……」

陽菜の様子が気になって、連絡がないか、連絡してもいいか、と気もそぞろになっていた勇人は軽く頭を振ると拓也が見ていたライトに視線を移した。

「……今日のライブが終われば暫く家に帰れるから、もう一踏ん張りしようぜ」

「ああ」

お互いに肩を叩いて励まし合う。

陽菜の事は気にかかるが公私混同はしてはいけない。
今日のライブも二人にとって、観客にとって、スタッフにとっても最高の物にするために勇人はライブの事に気を集中させた。
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