クールなアイドルの熱烈アプローチ
「温泉ですか!?」

帰りの車で先程温泉宿を予約したことを話すと、陽菜は目をキラキラさせて喜んでいた。

「私、温泉大好きなんですよー。
スベスベになるかなー?」

両頬をムニムニと触っている陽菜は本当に嬉しそうで、急な一泊旅行を楽しみにしてくれていることが分かった。

「そんなに好きなのか?」

「はい!特に夜の露天風呂が好きで、家族と旅行に行った時もよく一人で入りにいってました」

「そうか」

そこまで喜んでもらえたなら良かった。と勇人は微笑むと、遠慮がちにクイッと陽菜が袖を引っ張ったのに気付き視線を一瞬だけ移した。

「あの、温泉ももちろん嬉しいんですけど、それだけじゃなくてですね……?」

「ん?」

何故か微かに頬を赤くしてもじもじする陽菜に勇人は首を傾げると、意を決したように陽菜が口を開いた。

「勇人さんとの二人きりの旅行が、すごく嬉しいです。
新婚旅行以来、ですね」

はにかみながら微笑む陽菜に勇人は思わず片手をハンドルから外し口を覆った。
可愛い顔で可愛いことを言う陽菜を見て耳が赤くなってしまったのを陽菜も気付いたのか、肩を揺らして小さく笑っている。

「……陽菜」

「はい?」

「今日は覚悟して」

なんのですか!?と陽菜は慌てるが、勇人は固く決心した。
今日はもう、何があっても陽菜を離さないと。
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