クールなアイドルの熱烈アプローチ
「いやー、まさか陽菜姉がKaiserの越名勇人と一緒にいたなんて！
すごい偶然！いや、運命？」

「こら、朝陽っ！越名さん、でしょ！」

さっきまでいた公園と違う暖かいこの空間は、秋村家のリビング。
勇人と初対面した朝陽が、こんな場所で立ち話してマスコミにバレたら大変だ。と二人の意思など関係なく家に引き摺り込んだのだった。

それから何故公園に勇人と一緒にいたのかを説明すると、朝陽は先程とは違い朗らかな笑顔で話し始めた。
朝陽の言葉遣いに眉を潜めた陽菜は、朝陽の服の袖を少し摘まんで引っ張ると申し訳なさそうに勇人を見た。

「いや、別に気にしない。
呼びやすいように呼んでくれたらいい」

「あ、じゃあ勇人さんって呼んでいいですか？」

「朝陽！もう……ごめんなさい、越名さん。
これ、温まると思いますので飲んでください」

陽菜は勇人が座るソファーの前のテーブルに淹れたてのコーヒーを置いた。
礼を言ってカップに手をつけ飲む仕草は、ただ飲んでいるだけなのに絵になるようで、陽菜は一瞬見惚れてしまっていた。

「彼氏かと思った」

コーヒーを一口飲みポツリと呟いた勇人に陽菜は我に返ると困ったように微笑んだ。

「みんな最初は誤解するんですよ。
朝陽って初対面の人……特に男の人相手にはいつもあんな感じで……年下って見られたくないのかな？
それに、家の中以外では『陽菜姉』って呼んでくれなくて……」

難しい年頃でしょうかね？と首を傾げる陽菜に、それは違うだろうな。と勇人は心の中で思っていた。
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