クールなアイドルの熱烈アプローチ
撮影の時に大堂に触られた時は気持ち悪くて仕方なかったのに、今勇人に手を握られていても平気で、むしろ嬉しく思っている。

“陽菜姉ってさー、意外とわかりやすいよねー”

電話で約束したあの日、通話を切ったスマホを口元に当てて嬉しそうに微笑んでいた陽菜に朝陽は言っていた。

“もう、幸せいっぱいって感じ。
せっかくだから、このチャンスにもっと勇人さんに近づいちゃいなよ”

ニヤニヤしている朝陽に陽菜は真っ赤になりながら慌てるが、朝陽は何故か嬉しそうに何度も頷いていた。

“考えてもみなよ。
向こうから誘ってきたってことは勇人さん、陽菜姉のこと満更じゃないんだよ。
それって陽菜姉もなんじゃない?二人とも、同じ目してるし”

一体自分はどんな目をしているのか。
聞いても教えてくれなかったし鏡を見てみても分からなかった。

手を繋ぎ、同じ速度で歩いてくれる勇人を見上げると、その視線に気付いた勇人が優しく目を細めて微笑む。

自分もこんなふうに優しい目をしているのかな?
そうだったらいいなと陽菜ははにかみながら微笑んだ。

やがて目的地についた二人はレジャーシートを広げ腰を下ろすと、陽菜手作りの色とりどりのお弁当を広げた。

お握りを頬張りながら周りの景色を見ている言葉数の少ない二人の穏やかな雰囲気は、周りから見たら仲睦まじい恋人同士に見えた。
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