クールなアイドルの熱烈アプローチ
「え、また手帳なくしたの?」

「そうなのー。買ったばかりだったのにー」

あれから数週間。
自作の手帳を紛失したままなのもショックだが、新しく買ってスケジュールをびっしりと書き込んだ手帳をまた無くしたのもショックだった陽菜はソファーに座りクッションに顔を埋めていた。

「今月に入って三冊目だよー。
信じられないー」

「いや、無くなりすぎだろ」

普通に考えておかしいだろ、それ。と朝陽が顔をしかめた。

普段から整理整頓をきちんとしてる陽菜が今月に入って頻繁に無くし物をしている。何故か手帳ばかりだ。
それも仕事している最中、控室でばかり無くしていて、陽菜は目に見えて落ち込んでいた。

「ねえ、それ堀原さんに言った?」

「言ったよー。堀原さんも朝陽と同じ顔してた。
何か良からぬ物を怪しんで疑っているような顔」

陽菜は小さく溜め息をつくと、クッションを抱く腕に僅かに力を込めた。

「……私、誰かに嫌われてるのかな?
それで、業界内で言われてるようなイジメとかされてるのかな!?」

「被害は手帳だけなんでしょ?
イジメなら財布や携帯盗られたり、衣装破られたりするよ」

「そんな陰険な人、周りにいないよ!」

「だったらイジメられてるわけでも、嫌われてるわけでもないでしょ」

にこっと自信満々に笑う朝陽に、陽菜はやっと体の力を抜いた。

ーーそうだ、周りのスタッフの人達は仲良くなれたと喜んでくれていたんだから疑っちゃダメだよね……。
きっと、どこかに置き忘れただけだ。

陽菜は胸に込み上げるモヤモヤを押し込めるように、何度もそう自分に言い聞かせた。
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