クールなアイドルの熱烈アプローチ
「陽菜ちゃん、偶然だねー!撮影終わったの?」

「あ、大堂さん。お疲れ様です。
さっき終わって次に移動するところです」

メイク雑誌の撮影が終わり廊下を歩いていた陽菜は、前方から歩いてきた大堂に気付き会釈をする。
最近は陽菜も活動的に仕事をしようと決意したのもあり、出版社や撮影スタジオ、テレビ局などいろいろな場所に出入りするようになると、同じ有名モデルの大堂も忙しいようで現場でよく会うようになり、すれ違い様に一言、二言話すことが多くなった。

「今度さ、モデル仲間の飲み会あるんだけど陽菜ちゃんもどう?」

「あ、いえ……私は……」

「すみませんが、秋村は急いでますので」

大堂の誘いを断ろうとしたところ、傍にいた堀原がさっと二人の間に入る。
以前から大堂に対して良いように思ってなかったようだが、前回のCM撮影のベタベタと勝手に触れるアドリブが決定打だったらしく、大堂が陽菜に近付こうとすると必ず堀原が割って入るようになった。

「あの……すみません。では、失礼します」

簡単に会釈し足早に去っていく陽菜達を大堂はチッと舌打ちし、冷めた瞳で見つめる。

「やっぱあの人邪魔だな……」

先程までと違い低く呟いた声は誰にも拾われず、大堂は廊下を歩き出した。
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