【本編完】最恐No. 1はそこにいる
約束を果たす時
夜月迅逮捕から数日経ったが、
依然夜月迅は黙秘しているようだった。
柊によると、
質問には一切答えず、
抜け殻のようだと聞いた。
俺はそれを聞き、
面会の許可を申請した。
そして、
今日が面会日であり、
今まさに、
夜月迅が部屋に入ってくるのを待っている。
暫くすると、
ドアを叩く音がした。
中にいる監視官がドアを開けて、
警察が入ってくる。
その後ろには、
夜月迅がいる。
夜月迅が座ると、
「では、面会を開始します。」
監視官が言う。
「…。」
夜月迅は喋らない。
「お久しぶりです、夜月迅さん。
神夜真です。」
「…。」
何も喋らない。
それに、ずっと下を向いている。
「…詩笑さん。」
「っ…。」
反応があった。
「俺は詩笑さんから、あることを頼まれました。」
先程まで下を向いていた夜月迅がこちらを向く。
「貴方と詩音さんを、守ってくれと。」
「守る?
じゃあなんで俺達の会社が潰れた?!
俺と詩笑が苦労して起てたんだ!
それをなぜ!」
感情をあらわにし暴れる。
が、監視官に止められる。
「詩笑さんはこんなこと望んでいません。
それに、
貴方と、“詩音さんを”、と頼まれました。
今の貴方は、
詩音さんを傷つけることしかしていない。」
「そうだ、あいつだ!
あいつなんて、
あの時死んでいればよかったんだ。
なんであの時詩笑は庇ったりしたんだ。
あのまま逃げていればっ…!」
バンッ!
俺は台を叩いた。
「…詩音を、詩笑さんは守った。
自分が産んだ、大切な子だから。
大切な貴方との子供だから。
そして詩笑さんは、詩音を守り抜いた。
…詩笑さんの最後の顔、覚えていますか?
俺は、覚えています。
凄く安らかに、穏やかに笑って眠っていました。
…ここまで言えば、分かりますよね?
貴方は今、詩笑さんが守った大切な子を、
傷つけているんです。
これで詩笑さんが、笑っていると思いますか?
今の詩笑さんの気持ちを、考えてください。」
俺は、詩音の笑顔を思い出す。
「…頼むから。
詩音を、
心から笑顔にしてくれ。
それを出来るのは、
あんたしかいないんだ!」
俺はそう言うとすぐに帰った。
後ろで泣き声が聞こえた。
詩音はそれ以上に苦しかったんだ。
これから、生きて罪を償え。
俺に出来ることは、
夜月の会社の雇用者を、
別の会社に転職できるようにすること。
そして、
社会的責任と、
親の担うはずの行為をしなかった罪を、
償うように仕向けることだ。
あとは、あんたがどうするかだ。
俺は詩音のために、
あんたに力を貸してやる。
だから頼む。
詩音を安心させてくれ、笑わせてくれ。
そう思いながら、俺は帰路に着いた。