ずっと・・・
「ちょっと、有紗の番だよ」
小声で隣にいた実彩子の声で、やっと我に返った。
「あっ、営業所勤務の内山有紗です。よろしくお願いします」
なんとかそう言ったものの、周りを見る余裕なんてなくなっていた。
イヤ、前を見る勇気なんてなかった。
何でここにいるのだろう。
あ、ただの同姓同名か。
でも、声はあの記憶のままだ。
そんな頭がごちゃごちゃのまま、なんとか会議を終えた。
途中、実彩子助けてもらいながら。
その中でふと見れば、もう勘違いとかではなかった。
間違いなく、記憶の中の彼が目の前に座っていた。
ここに入る前の実彩子の言葉を思い出せば、実彩子は知っていたんだ。
彼がここにいることを。
なぜ、今になって再会するのだろう。
あれからもう5年。
あの時に全てを終わらせたはずなのに。
今では振り返ることもなくなっていたあの頃、偽りでもなんでも、愛に溢れた夢のような毎日だった。
今では考えられない、本当の私を見てくれたあの3ヶ月。
本物になれないと分かっていても、欲だけが増えていった。
人間の欲望は果てしないと知った日々だった。