ずっと・・・



……イヤ、1人だけいた。

私の正体を知っている人が。

今では貴重な存在だけど、もう2度と逢うことはない。

あの日、全てを終わりにしてきたから。


「それにしてもあの子たち、人にメイクを教える技量を持ちながらもアタシたちの正体に気づかないなんてね。人の顔、よく見てるはずなのにね」

「あー、よく人の顔にメイクしてるね。もう、これが本当だと信じているから分からないんじゃない?」

「思い込みか。先入観か。仕方がないか。
でもさ、会社で本性晒している人なんて少ないと思うけどね。形は違えど、みんな多少なりオンとオフがあるでしょ」

「あるだろうね。イヤ、ああいう子はないのかも。外で見ても同じようだし」

「さらけ出しても平気な人か。ある意味、能天気だね。人間誰しも、表と裏は持っているものだし」


実彩子も辛辣な言葉を吐くものだ。

でも、それだけあの子たちが純粋だとも言える。

これから、社会の色々な部分を知っていくのだろうけど。




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