ひとりだと思っていた君へ
「勘違いすんなよ、横山。誰もてめーみたいなポンコツを教師だと思ってねーからな。
この制服だって、てめーが着ろと言ったから着てるわけじゃねーよ。
自分の言った発言がすべて人に影響を及ぼしてるなんて思うなよ。
そういう発言が人を不快にさせんだよ。
だから生徒に殴られんだよ。自業自得だろ、バカ」
吐き捨てるように言うと、その場にいた渋谷達も立ち上がり、睨みをきかすと、あっち行こうぜとその場を離れた。
制服を着るようになったのは、ハローくんの言う通り停学になったからとか横山に注意されたからというわけではない。
停学になって数日後、彼の母親が倒れたからだ。
一週間ほどの入院だったが、学校なんか適当に行けばいいと思っていた彼にも少し考える時間が出来た。
そして母親から「お願いだから、高校は卒業して欲しい」と言われたことも心の片隅に少しあった。
それに制服を着ないと横山がずっと付きまとってくるだろうというのも想像できて、それも面倒くさかったからだ。
かといって不良をやめたいわけでもなく、もともと中学から喧嘩ばかりしていた彼が高校に入って大人しくなるなんて簡単ではない。
最近になって、喧嘩を売ること自体は少なくなったけど、結局は自分が今まで撒いた種なのか、名前が通り過ぎているせいもあるが、歩いているだけでときたま絡まれてしまうこともある。
柚月と初めて出会った日もそうだった。対立している高校の不良に追われていたのだ。