ひとりだと思っていた君へ
はっきり言わないハローくんを蔑んだように、須長くんは溜め息を吐いた。
代わりに
「……心臓病の術後の生存率知ってる?」
と訊いた。
「知らない」
「5年」
と即答する。
「中一のときに移植手術をしているから、まだ5年経ってない。
臓器移植って、移植して終わりじゃないからな。
柚月はその恐怖と生きなきゃいけないんだよ。
お前みたいな奴にその恐怖がわかるか?
人の気持ちとか考えたことないだろ」
「自分はわかるって言いたいの。その恐怖ってやつがわかったらなんなんだよ」
「わかるから、一緒にいられる。俺は、支えられると思ってるよ。三波みたいに人のこと簡単に傷つけられる奴に、一生懸命生きてる柚月のこと守れる気がしない」
簡単に傷つけるという言葉は胸に突き刺さった。
確かに沢山の人を傷つけてきた自覚は柚月含めてある。
だけどわかるから一緒にいられ、支えられるということには違和感を持った。
支えや守るということは、相手の気持ちを知らなければできないことではない。
「気持ちなんか……自分のことや自分の気持ちなんか何ひとつわからない相手にも支えられてるだろ」
「支えられてる?」と言ったハローくんの言葉を疑った。
支えるではなく支えられてる――そう言い切ったのは、ハローくんにとって柚月がそうだったからだ。