ひとりだと思っていた君へ
彼女を特に意識していなかった頃、何気なく本当の俺を知らないと伝えたことがある。
そのときは本当にそう思っていた。
だけど、今があるのはもちろん本当の俺を知らないと感じていた柚月がいたあの瞬間があるからで、もっと思い返せば彼女と出会った瞬間もそうだろう。
そういう出来事ひとつひとつに自分は支えられているのだと、今はもう気づいている。
それは柚月に限ったことではなくて、振り返れば、周りの色んな存在の力を借りてここにいられるような気がしていた。
だから、気持ちがわかることが大切なわけでない。
むしろ支えてもらっていると気づくことのほうが大切なような気がしている。
そこには感謝しかないからだ。
柚月と過ごした時間やもう彼女に会わないと決めた思いが余計にそれを実感させた。
だけど須長くんには返答の意味が伝わらず、
「どういう意味?」
「そのままだよ。気持ちがわからなくても、支えることは出来るってこと」
きっと、この話をしても平行線になる。
須長くんは諦めて
「俺は弟が柚月と同じような病気で亡くしてる。
だから、柚月のことは理解できると思ってる。
気持ちに寄り添える自信もあるよ。
それにお前みたいに危険な目には絶対合わせない。
本当に守りたかったら、ああいう状況にならないようにするのが本当に守るっていうんだよ。
お前みたいに敵ばかり作ってるような壊れてる奴には無理だと思う」