ひとりだと思っていた君へ

「凄かったんだ」
「うん。なんか母さんが母さんじゃなくなったっていうか。気がふれたみたいになったら、今度は魂が抜けたみたいになってね。家のこととか一時期全然やらなくなったりして、結構大変だった。あ、今はもうそういうことはないよ」

けどと言う。
「それからボランティアとかそういうのに参加するようになったんだ。たぶんそれで自分の気持ちの落としどころを見つけたんだと思う。結局、変わってないんだよ、あの人」
「……」
「ブログ見たって言うからわかるかもしれないけど、ずっと瑞樹が死んだことを引き摺ってる」
静かに頷いた。
「母さんがボランティアをする動機、聞いたら笑うよ?
自分みたいに子供を亡くす親になってほしくないからなんだって。
そんなこと言ったらさ、瑞樹が母さんを不幸にしたみたいじゃん。
瑞樹が死んだから、母さんは辛い人生になったみたいだろ。
ふざけんなって思ったよ。
……それがずごく嫌だった。
でもずっと言えなかったんだ」

須長くんの声は、震えていた。
普段、瑞樹くんの話をするときにそんな暗さを感じたことはなかった。こんな思いを抱えていたことも当然知らなかった。
柚月は押し黙ったまま、ただ静かに彼の思いを受け止めた。
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