ひとりだと思っていた君へ
15

ここのところ、快晴が続いている。
12月だというのに、少し春めいた陽気だった。
視界に赤い風船が飛び込んできたので思わず手を伸ばした。
掴まえてしまったけど、どこから飛んできたのか。

そう思っていると
「すみません、この子が手を離しちゃって」
慌てた様子の幼い男の子を連れた母親が駆けよってきた。
「ほら、お兄ちゃんにありがとは?」
人見知りがあるようでハローくんの顔を一度見ると母親の後ろに隠れてしまう。

それに困って、
「ハルくんの風船とってくれたんだよ。ありがとうしなさい」
とハローくんの方へ行くよう促した。

同じ名前だったので、親近感が湧いた。
風船は返してほしいようで手を伸ばすので、ハローくんは屈みながら手渡す。
小さな手がギュッと紐を握ってから、離した。
「本当にすみません。ありがとうございました」
息子の代わりというように母親が礼を述べた。

ハローくんはハルと呼ばれた男の子に
「ありがとうって感じたときに言えばいいんだよ」
そう言ってから立ち上がった。

休日の大型複合施設はいつも家族連れで賑わっている。
彼らもそちらに行くのだろう。
去り際にも頭を下げて行く母親に一度頭を下げて、踵を返すと見覚えのある顔を見つけた。
< 191 / 204 >

この作品をシェア

pagetop