ひとりだと思っていた君へ
だけど、そこでまた柚月に迷惑をかけてしまうかもしれないという気持ちが湧いてきて踏ん切りがつかなかった。
『本当に守りたかったら、ああいう状況にならないようにするのが本当に守るっていうんだよ』と須長くんに言われたことが的を得ていて何も言い返せなかったくらいだ。
またああいうことが起きないとは限らない。
ふと仰ぐと天使の羽根のような雲を見つけた。
柚月が隣にいたら嬉しそうに目を細め見上げているだろう。
想像すると、
『今、ハローくんの中に、天使がいたみたいだった』
と笑いながら言った彼女が空と重なった。
黒でも灰色でもなく真っ白な天使だったと。
「もらった命に感謝してれば、それが守ってくれる」
気づけば、病室で柚月に告げた言葉を反芻していた。
自分で言ったことのようで、誰かに言わされた科白のようにも聞こえてくる。
そして言いながら、自分の為の言葉だったと気づく。
感謝をしている事で守られるなら、柚月を守ろうとすること自体が不自然だ。
自分が守ろうとすることで、彼女を逆に守らなければいけない立場にさせていたんだ。
守るとか傷つけたくないとか、本当はどうでも良くて、本当の思いはただ彼女と一緒にいたい。それだけだ――。
今まで感じていた苦しみは嘘だと確信すると、肩の力が抜け自然に走り出していた。