ひとりだと思っていた君へ





どこから飛んできたんだろう。
柚月の着ていたコートの袖に小さな白い羽根がくっついていた。
それを指でつまみしげしげと眺める。
なんとなく天使かなといった気になると、彼女が知らないところで幸せのサポートでもしてくれるようにも感じた。
ありがとうとポケットにしまう。

快晴の空が気持ちいい。
柵に身を寄せて海を眺めていたけど、今日もやっぱりハローくんのことを思い浮かべてしまう。
だけど会えなくて淋しいとかではない。
ただ感謝が湧いてきて目をつむり手を合わせた。
頬を海風が撫でていく。
ふっと柵に何かぶつかったような感覚があり目を開ける。横を見ると同じように手を合わせたハローくんがいて、驚きすぎて声が出なかった。

「何、してるの?」
声をかけられ柚月に視線をやる。
「花を持って祈ってるから、誰か死んじゃったのかなって、つい条件反射で」
確かに通りすがりの人が見たら、そういう風に見えても仕方ないけど素直すぎる彼の行動がおかしくて柚月は大笑いしてから
「……死んでないよ。誰も死んでない」
涙が出てきて指で拭った。
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