ひとりだと思っていた君へ

「芋屋って。焼き芋屋さんみたいだよ。スイートポテト屋さんです」
「一緒じゃん」
「本当、甘いの興味ないんだね。まだやってるけど」
「そうなんだ。今度買いに行ってもいい?」
「うん、おいでよ」
「そうする。じゃあ、これありがとう」
と須長くんは行ってしまった。

「須長っちと相変わらず仲いいね」

湖夏は話したことのない人にも勝手にあだ名をつけて呼ぶ。須長くんのこともそうだ。

「あ、うん」
「二人で遊ぶときって何してんの?」
「何すんのって、お喋り?」
「お喋り? それだけ?」
「うん。なんで?」
「須長っち、女子かと思っただけ。お喋りだけで時間過ごせるのってよっぽど仲良くないと無理だよね」
「そういうものかな?」
「ふうん。そういや須長っち、バド部の子に告られてたとか噂になってたけど、あれって本当なの?」
と声を潜める。

「そうなの? 知らない」
「え、知らないの? 本当にお喋りしてるの、あんた達」
と情報量の少なさに疑われる。

「お喋りしてるけど、そういえば恋バナとかしてないかも」
「へえー、なんか不思議。いつも何の話してるんだか。
もしかして知らない内に須長っちが柚月と付き合ってるって勘違いしてて、それで恋バナにならないとかじゃないよね?」

湖夏のぶっ飛んだ発想に笑いながら、
「さすがにそれはないよ。大丈夫、ただの友達だから」
と答えた。

そこでチャイムが鳴り響いた。
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