ひとりだと思っていた君へ
「そういえばうちのママがさ、宏くんに会いたいって言ってたよ」
「え、まじで。なんか嬉しい。俺のこと覚えてるんだ」
「覚えてるに決まってるでしょ。宏くんいい子だったわよねーとか言ってきてさ。あ」
ふとママの早とちりを思い出し笑う。
「何笑ってんの?」
「ううん。ママが私と宏くんが付き合ってるのとか勘違いしてて。慌てて否定したよね」
だけど須長くんは笑うことなく
「別に俺、そう思われてもいいと思ってるけど」
「良くないじゃん、好きな子に誤解されるよ」
冷やかすつもりで言ったのに
「今言えるのは、百パーセントそれはないってことだな」
と笑いもせず言いきられた。
冗談のつもりが冗談にならず、変な空気になり柚月は気まずくて話題を戻した。
「あ、それでママがすごい会いたがってたんだ」
「あー、俺も会いたいなおばさんに」
「あ、じゃあ今度うち遊びに来る?」
「柚月がいいなら」
「うん、いいけど……ママにまた聞いてみるから」
須長くんは思い出したかのように
「そういえばうちの母親も会いたいって言ってたよ」
柚月はその言葉を理解できないようで返事に詰まる。