ひとりだと思っていた君へ
「え、それ、本当に?」
「うん」
「私の話なんかするの?」
「うん、たまに。ほら高校一緒になったこと言ったから、たまに気になるみたい、柚月のこと」
「なんか言ってた、おばさん私のこと?」
恐る恐る尋ねる。
「なんかって…………元気にやってるみたいで嬉しいって、会いたいなって言ってたよ」
おばさんが自分のことを良く思っていなかったことを柚月は覚えている。確かに家族ぐるみでお付き合いがあって良くしてもらったこともあったが、あのことが起きるまでの話だ。
心臓が速くなるのがわかって
「そっか。嬉しいな」
と喜ぶ振りをした。
「あ、そういえば柚月は文化祭、誰かと回るの?」
「え。うーんと友達と。あと他校の友達も遊びに来るから、その子とも少し回るかも」
「あ、そうなんだ。忙しそうだな。そっか」
「何かした?」
「ううん、別にいいや」
「うん。あっ、そろそろ行くね」
「おう」
柚月の背中を見送りながら、「本当、鈍感」と須長くんは呟いた。